振りかえって「自分史」を書いてみる。人生のテーマを見つけるために。
〜痛快生活講座〜
 日本航空のサラリーマンだった久恒さんは、30歳のとき「知的生産の技術」研究会という社外の勉強サークルに入会、思考の技術や情報整理のノウハウについて専門的な知識を学んだ。
 自分にとっての「テーマ」を見つけ、深く掘り下げていけば人生が楽しくなる……。それを教えてくれたのは母親だった。
 「母は60歳から趣味だった短歌の歌碑を調べ直し、出版しました。その間は生活の苦労も忘れて実に生き生きしていたんです。」
 勉強会で学ぶ傍ら『自分学のための知的生産』『図解の技術』『企画とプレゼンの方法』など、久恒さんは積極的に執筆活動にも従事。書くことで独自の発想を身に付けていった。その著書がきっかけで、県立宮城大学学長の野田一夫氏から誘いを受け大学教授への道が開けたのである。
 民間人から公立大学の教授へ。しうしそのために文部省の審査にパスしなければならない。「必死で勉強しました。自分の考えや知識を体系的に整理して、図にまとめてみる効用。私の得意分野である『図解の技術』を中心に、文章中心主義の学習には限界があることを訴え、合格しました」
 専門分野を掘り下げ、得意分野を極めたことが、結局は第二の人生のスタートにつながった。 「サラリーマンから大学教授。転身には違いありませんが、どんな人の人生にもそれまでの人生が無縁であるはずがありません。未来とは、今までの人生で自分が好きだったこと、得意だったことの上に存在するのではないでしょうか」 50歳----。
  この年齢に達したら、これから自分の人生をどう生きるか、『テーマ』を見つけるのが課題と、講演でもしばしば述べている。しかし、どうすれば「テーマ」が見つかるのだろうか。久恒さんは「自分史」書くようにすすめる。 「例えば、釣りが趣味の人なら『釣り』をテーマに自分史を作ってみる。釣りとの出会いから、これまでの釣り歴。それらに釣り場の環境や道具の変遷、魚の話・・・・・・。釣りを接点に立体的に自分の過去を振り返るのです。その際記憶に頼るのではなく、図書館や専門図書館に足を運び、具体的に突き詰めていくといいものが書けます」
  久恒さんは学生にも自分史を書かせている。人生はどこに転機があるかわからない。自分を発掘するには、早く取り掛かったほうがいい。いつのまにか口癖になった。
旺文社ムック「ガリレオ」

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