は じ め に |
深刻な不況と呼ばれる時期が来てもう長い。経営の効率化を進めるため全国にはチェーン店、フランチャイズ店が増えてきている。それを利用する顧客にとっては、全国どこでも同じものを得られるという利便性と、名の知れる店舗としてのブランドが大きな魅力となる。 かつて「商人の街」として栄えた仙台にも、現在全国で展開されている店舗が進出し、それと同業の老舗は衰退の一途をたどっている。仙台で見られる街並みは、全国どこでも見られる景色となり、それを都市化と勘違いする人すら見られる。利用者は全国展開されている店舗へのブランド意識が高まり、それに憧れ利用する。 しかし、そうした街並みの変化に都市としての機能があるかどうかと問われると疑問が残る。すなわち、買い物をする場所として以外の機能、都市文化がそこに根付いているかという問題が現在の仙台の街にはある。これまで、文化施設として街並みに存在していたのは「映画館」であったが、映画館は郊外の大型店舗と併設される映画館に人を奪われ、映画を見るために人は街ではなく郊外へと出かけるようになった。人が街に出かけるのは既にショッピングもしくは食事のためになり、知的・文化的活動を街で営むことはなくなってしまった。 今回、庄文堂の施設改装には、仙台に不足している都市文化の確立を目的とした。そしてそれが決して一過性のものにならぬよう、郊外施設とのつながりや仙台に住む人とのつながり、まつりとのつながり、そして仙台の歴史とのつながりなどをご提案したい。つながりから生まれる新たな企画もあろう。 この提言書では、私たちの考えた「つながり」と「歴史」と「人」による仙台のアイデンティティーを確立するため、宮城大学久恒教授の下で行われた総合研究(事業構想学部事業計画学科・デザイン情報学科情報システムコース・同学科空間デザインコースの学生によるグループ研究)での結論を述べ、企画や設計、そして今後の方向性に活用していただきたい。そして、仙台を歩く人々がこの施設を利用することによって、仙台の都市文化を感じてもらいたいと切に願う。 |