〜宮城県への貢献〜

99・7・31
自分史のすすめ◆仙台の創意工夫(2)
自分を客観視するための知的生産技術

まず、授業の冒頭で、過去の偉人や事業家などの生き方について話す。ここで久恒教授が訴えるのは、「人生の目標をきちんと持った人と持たない人の違いを自ら知ること」である。 その後、当日の自分史のテーマが示され、学生は目を閉じたまま久恒教授が出す二〜三の質問(たとえば、「君たちはなぜこの大学をめざしたのですか」など)について考えていく。これが約五分。教授の、「では書き留めてください」の言葉を合図に、学生たちは五分間の間に思い描いたこと、考えたことを絵でも文章でも思いのままに書き留めていく。これを年間一五回の授業で繰り返す。

性格分析の効用
 ところで久恒教授は、人生のテーマを決めるのは生い立ちと出会い、出来事の三つであり、職業を決めるのは性格と関心分野、能力の三つだという。これらの要素を整理しておかなければ自分史は自慢史に流れ、知的な生産にはならない。 その整理を行なうために授業では、性格分析と発表を織り込んでいる。性格分析にはエニアグラムを使う。エニアグラムは、人間の性格には九つのタイプがあるという前提に立つ。どのタイプに属するのかを分析によって明らかにし、本当の性格を知ろうというものだ(エニアグラムを試してみたい方は、国際コミュニオン学会http://www.enneagram.gr.jp/ を参照)。

 そして、学生は書き留めた自分史の素材をエニアグラムの結果も交えながら発表する。 「エニアグラムによる性格分析は、自分が感じてきたものは実は性格に大いに影響されていることに気づき、意見発表は自分と同じような人がいることに気づいてもらうためです。つまり自分を客観的に見て探求していく下地をつくります。
  こうした作業を通して、自分史をまとめることで人生の将来構想を描くという本来の目的が実現されるのです」(久恒教授)

まずは図解を
久恒教授によると、知的生産を行なうには、さまざまな技術があるのだが、自分史執筆で大切なことは「要は、文章化されたものが絶対だと感じる文章至上主義を捨てること。上手に書こうとするから書けなくなる。文章ではなく自分の思いをメモする図解で十分です」。 そして、もう一人の共同製作者である沼田芳夫さんは、「経済復興は自分史から」と夢をふくらませるのである。(以下次号)

   
週刊ダイヤモンド