1999年9月21日(火曜日)
大規模事業評価 知事、中核施設凍結を説明
評価基準は手探りの状態
 県の大規模事業評価委員会(委員長・大滝精一東北大教授)が20日開かれ、浅野知事が初めて出席し、同委員会が「妥当」と答申した三本木町に整備予定の保健医療福祉中核施設事業を「凍結」と政策判断したことについて説明した。また、今後の委員会運営の在り方についても意見が交わされ、全国でも珍しい政策の事前評価がまだ「走りながら考える」(浅野知事)状態が浮き彫りになった。
 浅野知事は凍結について「財政状況との比較と運営主体が決まっていないため」とこれまでどおりの説明を繰り返し「中核施設は凍結するが、既存の地域リハビリを充実させ、全体のレベルアップを図る努力は続ける」と理解を求めた。
 委員からは「財政状況など前提条件を公開してもらわないと判断できない」、「検討にあたっての評価基準を示してほしい」――などの意見が相次いだ。一方で「今回の判断は妥当だ」との意見も出された。  今後の委員会の在り方について、大滝委員長が県の財政状況をきめ細かく説明するよう求め、県側も了承したほか、評価する際の基準のひとつに環境問題を据えることを確認した。
 委員からは「委員会の結論と県の判断が異なる際は、委員会で県の判断を再評価すべきだ」、「委員会の結論を県民に示し、事後に意見を聞く機会も設ける必要がある」――などの意見も出されたが、総意には至らなかった。  また、新たな評価対象として白石工業高の建て替え事業に対し県教委からは「教育委員会で意思決定したもので必要。対象外にしてほしい」との要望があり、来月中旬に開催される次回委員会で検討することにした。
評価の指標 事業の必要性に純化へ
「今回は特殊な事例」と知事 委員との質疑で
 浅野知事は20日の大規模事業評価委員会で、当分の間、凍結するとした保健医療福祉中核施設事業について1時間に渡り、委員の質問に答えた。
 浅野知事は凍結決定後、初めて開かれた同委員会の冒頭「県の判断は委員会の結論と違う。委員の疑問や今後の対応について説明する」と切り出した。  これに対し、委員会に出席した9人の委員全員から質問が相次いだ。
 紅邑晶子・せんだい・みやぎNPOセンター事務局長が「着手した事業を対象にしたので緊急、重要と思っていた」と問いかけたのに対し、浅野知事は「事業は機械的に淡々と出した。優先順位をつけて選んだのではない」と答えた。
 宗前清貞・財団法人ふくしま自治研修センター教授の「最終的に財政で決着するなら、我々が意見を言う意味があるのか疑問だ。(委員会は)何を指標に見ればいいのか」との質問には「今回は今年度予算に入っているので、やらざるを得なかった。通常の形とはかけ離れたものだ。これからは事業そのものの必要性に純化した案件になる。今回はやや特殊な事例になった」と説明した。
 また、大滝精一委員長らは「事業の実現状況を委員会に公開してほしい。評価に多分にかかわる問題だ」と注文をつけた。  これに対し、浅野知事は「私の判断では、中核施設の運営主体は厳しいと見ていた。事業を担当する部局は何とかなると見ていた。その辺の見方の違いが出てくる。県の中でも事業と査定の部門では見解が分かれる」と弁明した。
 浅野知事の判断について、久恒啓一宮城大事業構想学部教授は「我々の役割は、論点の整理と公開して県民の意見を聞くことだ。政策、政治判断は予算とかが関係する。これはこれでいい。委員会の役割は白黒をつけることではない」と述べ、妥当とする考えを示した。
読売新聞

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