自立的回復の芽生えが見られる日本経済
景気は本格的な回復軌道に乗ったといえる状況にはないものの、自律的回復 への移行過程にある。
「消費」は消費マインドは持ち直しつつあるものの可処分所得は減少してお り、回復テンポは遅く総じて横ばい状況にある。また「アジア経済」の急速
な回復等を受けた形で輸出入が増加するという好循環が見られている。 これをうけて、在庫調整が完了した鉱工業生産は緩やかに増加し、第三次産
業も運輸・通信、金融・保険の伸びが高くなるなど、全体に緩やかに増加を している。
ここにいたる状況を細かく展望する。
まず「公共投資」は景気の下支えを果たしているが、民間では「設備投資」 に持ち直しの動きが明確に現れてきている。製造業ではITの好調を受けた
電気機械の持ち直しもあり減少幅が縮小しており、非製造業においてもサー ビス業や通信の持ち直しもあって前年比増となっている。住宅は99年前半
の持ち家、後半のマンションの好調で景気の下支えの役割を果たした。
「金融」では不良債権については透明で適切な処理が行われており、大手銀 行に関しては峠を越えた。
「企業収益」は2000年3月期決算をみると、大幅増益を果たしており 97年1−3月期の前回の景気の山をすでに越えている。回復パターンをみ
ると売り上げ高の回復が遅れる中、人件費・変動費を抑制して利益を捻出す るという増収なき増益のパターンとなっている。
景気回復の足かせとなっていた設備・雇用・債務の3つの過剰については、 改善がうかがえる。特に雇用についてみると、完全失業率が4.9%という
最高値を記録した後やや改善をしているものの、依然高水準で推移している など、雇用・賃金の調整が進行中である。雇用者数は常用雇用や中小企業が
減少傾向にあり、臨時・日雇い、大企業に増加がみられるが全体としては減 少が続いている。雇用は総じて依然厳しい。
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