宮城大(宮城県大和町)で行われているユニークな「自分探し」の授業のエッセンスを取り入れた就職支援ソフトが、注目を集めている。適職選びにあたって、まず自分の生い立ちを整理し、自己分析データを蓄積しながら、目指すべき人生テーマを発見していく内容だ。来春、初の卒業生を送り出す宮城大。就職内定状況は好調で、ソフトの”効果”を実証したとも言えそうだ。
ゲーム感覚気味
このソフトは宮城大学事業構想学部の久恒啓一教授が監修したCD-ROM「自分伝説V」。仙台のベンチャー企業、能開生涯学習研究所(沼田芳夫社長)が昨年開発した。これまでに、全国で約三千本が売れたという。
ソフトの元となったのは、久恒教授が三年間担当した「知的生産の技術」という講義だった。出生から現在まの「自分史」を年代ごとにじっくり思い返し、作品として仕上げる。
民間企業出身の久恒教授は「就職はライフデザインの一部。過去を振り返ることから、未来のテーマにふさわしい戦略が生まれるはず」と持論を話す。
「自分伝説V」は、この考えをもとにゲーム感覚や図解表現による手法も加味。人生の設計図が楽しく組み立てられるよう工夫されている。自分分析データや自分年表、自分史を入力。そこから確かな職業観を導き出し、最終的に就職対策の武器になる自分のキャリアファイルが出来上がる。
面接がスムーズ
実際の授業の中で、こうした指導を受けた宮城大の学生たちは、進路選択にどう生かしたのだろうか。
「書き溜めた自分史を話し言葉にするだけで、面接官から聞かれた質問にスムーズに答えることができた」と相原真紀子さん(事業構想学部四年)。志望企業への自己アピールに、講義の経験を最大限生かしたという。
「長所、短所を改めて見詰め直すことが出来た」「興味の方向を再確認した」など、就職活動を前に自分のれポートを読み直してみたという学生は多い。
事業構想学部の就職内定率は八月末で七十パーセントを超えた。
「一期生としてハンディがあった割には、みんな、よく健闘している。早くから職業観に目覚めた結果だろう」と久恒教授は、授業の効果を強調する。
ミスマッチ防ぐ
企業家志望の学生の職業観にも刺激を与えた。パソコンの技術支援会社を目指す渡辺一馬さん(同学部四年)は「自ら書き、語ることで、自分の人生に対する責任を感じるようになった」と自信を見せる。
文章表現教育の指導者でもある脳開生涯学習研究所の沼田社長は「自分が何者かわからないまま人気企業を目指す結果、職業とのミスマッチが生まれる。若いうちに自分史を書くことは、進路を見定めるだけでなく、家族や社会との関係を知ることにもなる」と、このソフトを活用した人生設計を勧めている。問い合わせは同社022(275)6401へ。
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