2001.9.20

寺島実郎に同世代のライバルはいない

 ○他日を期す
寺島さんと初めて会ったのは世田谷のご自宅だった。まだ三井物産の課長代理の頃だ。風貌の強さ、発言のレベル、人物としての迫力に強い印象を受けた。いずれ日本を代表する人物になるだろうとの確信を持って、この出会いに興奮したことを思い出す。話を聞いているうちに思い出したのは、以前中央公論に寄稿した「我ら戦後世代の坂の上の雲」という論文を読んだ時の衝撃と、今となっては不明を恥じるほかはないが「この人をライバルとして勉強したらいいのではないか」というアイデアが浮かんだことだ。いまでも鮮やかに思いだす。その後20年近くお付き合いいただいているが、予感どおり新しい型のオピニオンリーダーとして、硬派論壇の第一人者となった。寺島さんの新入社員時代を知っている野田一夫先生に当時の印象をうかがったことがあるが、「他日を期すという気概を感じた」との言葉が印象的だった。

○時間管理の達人
寺島さんが勤める三井物産で机と椅子を見たとき、寺島さんは勤め人だったのだと改めて感じて不思議な気がしたことを思いだす。活発な活動を支えるのは、優れた時間管理である。寺島さんを見ていると、マネジメントの要諦はセルフマネジメントにあり、セルフマネジメントはタイムマネジメントに尽きることを改めて感じさせられる。
○名は体をあらわす
「実郎」とはよくつけたものだとご両親の命名に感心している。実業、実学、実質、、、、と言葉を並べてみると、その名前にふさわしい人物になっていると感じる。プロジェクトや会社のネーミングはその後の成長を決定づけることが多いが、それは個人においても同様であることを示す好例である。

○日々進化する思索者
寺島さんの講演をよく聞く機会があるが、時代のテーマを常に意識した話であり、同じ内容であってもその都度新しい知見に満ちている。それは思想の骨格がしっかりしており、新しい情報はその骨格に沿って見事に咀嚼されているからだ。また1ケ月の間に数回連続して講演を聞く機会があったが、思索が日々少しづつ着実に進化していく過程と思考の深まる現場を垣間見て感銘を受けた。

○寺島実郎のライバルは誰か
江戸時代の儒学者佐藤一斎の言葉に次の言葉がある。
  少にして学べばすなわち壮にして為すことあり
  壮にして学べばすなわち老にして衰えず
  老にして学べばすなわち死して朽ちず
寺島さんには同時代にライバルはいないと思う。深夜自宅で対話を重ねるのはその著作に現れるような時代のテーマと格闘した歴史上の構想力のある人物だろう。寺島さんは歴史の中で屹立することを目指しているのでないか。「死して朽ちず」は、寺島さんの目標ではないかと思う。

○寺島実郎は何になろうしているのだろうか、何をしようとしているのだろうか
この問いをしばらくの間持ちつづけながら、時代の課題を解こうとする巨大な一個の体系、知性である寺島実郎という人物のウオッチングを今後も続けていきたい。

Global Information Network Newsletter(vol.6)

BACK