○他日を期す
寺島さんと初めて会ったのは世田谷のご自宅だった。まだ三井物産の課長代理の頃だ。風貌の強さ、発言のレベル、人物としての迫力に強い印象を受けた。いずれ日本を代表する人物になるだろうとの確信を持って、この出会いに興奮したことを思い出す。話を聞いているうちに思い出したのは、以前中央公論に寄稿した「我ら戦後世代の坂の上の雲」という論文を読んだ時の衝撃と、今となっては不明を恥じるほかはないが「この人をライバルとして勉強したらいいのではないか」というアイデアが浮かんだことだ。いまでも鮮やかに思いだす。その後20年近くお付き合いいただいているが、予感どおり新しい型のオピニオンリーダーとして、硬派論壇の第一人者となった。寺島さんの新入社員時代を知っている野田一夫先生に当時の印象をうかがったことがあるが、「他日を期すという気概を感じた」との言葉が印象的だった。
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