図解革命が始まった |
野田 一夫 |
場所を教えるには「地図」が,また事象の推移や比較を示すには「グラフ」が,言葉より遥かに有効な伝達の手段だということは誰でも知っています。しかし,学術書から小説にいたるまで,膨大な文章の内容を理解するには「図解」が一番得策であるということを知っている人はごく少数です。いや,知っていても,技術としてそれを身につけている人は目下のところまずいないといっていいでしょう。わが国を含めほとんどの国で,この技術を正規の授業で教えている学校がないからです。 このことに逸早く気づき,その技術を自ら開発しながら仲間を増やし,著作や講演を通じて地道に世間に訴えつづけてきたのは,久恒啓一君です。僕が知り合ったのは,同君がまだ日本航空の広報課長をしている時でしたから,十数年も昔のこと。同君の初期の著作を読んだ僕は直ちに,何とかして同君を(冗長でへたくそな文章の論文や著作が氾濫している)大学の世界に招こうと決意しました。宮城大学の創設に当り,「事業構想学部」という前代未聞の学部設置を計画した時点で,日本航空のトップに直接お話しし,僕の決意は遂に実現したのです。 結果は上々。(真に役立つ授業によって)学生間の同君の人気は抜群であることはもちろん,(相次ぐ著作や講演によって)世間での同君の評価と知名度は急速に高まりました。昨年末刊行された『図解仕事人』(光文社新書)は新書部門のベストセラーとなりましたし,『図で考える人は仕事ができる』(日本経済新聞社)は今年5月発行以来圧倒的な売れ行きで,このところ新聞の読書・広告欄には同君の名前が出ていない日はなく,“仕掛人”の僕は密かにほくそえんでいます。次に同君が計画しているのは『図解ドラッカー入門』(仮題,かんき出版)。日本発の「図解革命」がいよいよ始まろうとしているのです。 |
野田一夫website ラポール410号より |