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勉強してはいけない!
混迷の時代だ 現場に出よう

勉強してはいけない!混迷の時代だ 現場に出よう

 「勉強してはいけない。すればするほどバカになる」こういったのは、本書によれば「知的生産の技術」 の著者である梅棹忠夫氏らしい。

 このことに早くから気づいていた人に司馬遼太郎がある。帝国大学は西洋文明の配電盤の役割を担っていたが、いまやその指名は終わったのではないかと、何かの本に書いていた。学者や官僚、そしてこの国 のリーダーたちは配電すべきものを失っているのだ。日本が近代文明にキャッチアップし終えたとき、その果てにあるのは、途方もない混迷なのである。

  現場に出よ、と著者は言う。その通りなのだ。「解」は現場にしかありえない。そしてたとえば「運」とうもの。成功した経営者は自分で運が強いと思い込んでいるのだ。
誰にでも運はめぐってくるのである。それをつかめるかどうかは、自分が運がいいと思っている人間だけだ。こんなことは現場で働いた経験のある人なら、じつはみな知っている。口に出して言わないだけだ。

 著者はサラリーマンの経験があるゆえ、その機微を伝えようとしている。三箇所か四箇所、私は感嘆した。そういう本なのである。

2003.11.30
朝日新聞
キャリア開発史 久恒啓一の紹介