JR仙台駅から地下鉄とバスで五十分。百二十人もの学生で埋まった宮城大学の大教室は、静まり返った。「そんなこと知らなかった」―
二〇〇一年秋のことだった。図を使った解説が得意な久恒(ひさつね)啓一教授は、専門外の経済財政白書の講義をしていた。
(中略)
落差の激しい急カーブ曲線に驚いた学生は講義終了後、「これはオレたちの借金じゃない」「日本になんている必要はない」とく口々に訴えた。
四年後。ことしの経済財政白書は、世代間の損得は年金制度の見直しなどでわずかに縮まったことを指摘した。しかし、財政赤字は八百兆円に拡大。後世代の負担はますます重くなる。
「世代間の亀裂は深まるばかりだ。ほっておけば深刻な政治問題になる」。久恒教授は予想する。
(後略) |