「川内小阪という駅がある。−(略)−私は30年まえにこの地にきて小阪駅の次の八戸ノ里駅周辺に住んだ。−(略)−文字どおりの場末である。」という記述が『以下、無用のことながら』という司馬遼太郎のエッセー集の「駅前の書店」という文章の中にある。夏の季節に司馬遼太郎記念館を訪ねた。
(中略)
コーヒーを飲みながらエッセー集を読むという、ゆったりした、ぜいたくな時間を過ごしていると、あの優しい眼差しの司馬遼太郎が傍らにいるような不思議な柔らかい感覚があった。そして「もっとちゃんと考えな、あかんで」(誰かに言ったことば)という声が聞こえたような気がした。
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