キャリア開発史

先進国日本の知的生産病患者諸君へ

 現在の日本経済の実力はかつて七つの海を支配した大英帝国の活躍に匹敵するものです。海外から日本企業の躍進の秘密をさぐろうと、数多くの人々が来日しています。高い生産性をあげている日本式経営とは、一体どういうものでしょうか。

l 生産性の向上について幅広い国民的合意が成立している(ビジネスウィーク誌)
l 斜陽産業から成長の潜在性の高い産業への機動的な労働力の移動
l 労働者の勤勉さと最新技術、すぐれた順応性(英タイムズ)
l 残業を美風と考える風土(西独、銀行員)
l 日本は、企業も個人も長期的展望にたってものごとを運ぶのが得意である(西独、銀行員)
l 労使は欧米では考えられないレベルで経営上の高度な問題に関して話しあう(関経協会長)
l 状況の移り変わりにも有効に機能できる合意と協力システム形成
l チームワークで動く人間尊重の経営 l 集団主義経営、弾力的組織、終身雇用、年功序列、企業内組合、稟議的意思決定
l 人間資源の偉大さを日本は世界に教えた(マーシャルアメリカ労働長官)
l ひとつの職場でなしに関連の深い他の職場にもまわる熟練形成(小池和男教授)
l 労使協調が日本企業の強さ(長谷川慶太郎)
l 作業改善案が労働者から提案され、現実に役立っている
l 新しい技術や設備への導入への抵抗が少ない l 消費者第一の品質管理

 以上が、ここ最近の新聞・雑誌の記事に紹介されているものの一部です。ひと昔前、年功序列で終身雇用だからぬるま湯のため、活力が生まれるわけがないとか、企業内組合だから経営に対し弱腰で賃金があがらないとかいう議論が盛んであったころとくらべ隔世の感がします。最近の論調をみて気がつくことは、日本の今日の成功の原因を、日本の特殊な文化にもとめる傾向が強いことです。文化の差をもたらすという考え方は、頭が良いからいい点数をとれるのだという宿命論的な考え方と同じであり、勉強の方法や生活の律し方、ノートのとり方等を全く無視する議論と同じであります。よい結果を生みだすためには、必ずよい方法が存在します。日本の今日の成功にも、文化にねざすものが大きな比重を占めていると思います。昔日のイギリス、最近のアメリカ、今日の日本が各国から研究の対象とされているのは、すばらしい実績をあげたためであり、その国の持つノウハウを学びたいがためでしょう。要するに、勝てば官軍なのです。日本が成功したのは、日本民族がすぐれているからだという考え方は、敗戦後にみられていたように、日本が負けたのは日本民族が劣っているからだという議論と同様、不毛で危険なものだと思います。

 知的生産も同様であります。知的生産の技術を学ぶのもよい知的生産を行うためです。「結局、あの人は頭がいいのだ」というようなあきらめですましてしまう人には良い知的生産はできないでしょう。日本の企業の実力が向上してきたのも、すぐれた国々のすぐれた技術を学びそれを日本の風土にうまくフィットさせたからだと思います。今や、日本は、先進国から学んだ技術(QC活動やZD運動)を逆輸出しています。学者や評論家等、知的生産のプロが持つ技術を一般の人が自分のものにして価値の高い知的生産を行う時代がきつつあります。カラーテレビや自動車、半導体と同様、いい知的生産物を生産すれば、おのずから、日本の知的生産の技術も普遍性をもつということでしょう。知的生産のすばらしさを語るだけで、自分は生産しない人、そしてその技術のみを語る人には決して知的生産はできません。なぜなら知的生産物を生産しない知的生産者などというのは、この世に存在しないはずですから。

知研ニュース 80・10・1

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