キャリア開発史

アングル―――青年会議所と姉妹都市

新・都市の論理
 世界中枢都市東京、関西新空港で復権を図る西の拠点大阪、それに膨大な旅行潜在人口を抱える名古屋、この3大都市圏を中心として、当社は積極的に国内ネットワークを張りめぐらすことになろう。昨年来の新航空政策からすると国内の主要空港として視野に入ってくるのは、金沢、鹿児島に加え、高知、広島、松山、長崎、熊本、函館と言った需要の多い都市である。来春まとまる第四次全国総合開発計画(四全総)でいう地方中枢都市(札幌、仙台、広島、福岡)、および地方中核都市(県庁所在地)のなかで、東京大阪との人的交流の多い都市を「主要都市」とでも名付けて、当社は積極的に乗り入れのための活動をすすめるべきである。
 四全総のテーマとして、従来の「定住」に加え「交流」を追加したことは見のがせないところである。交流はつまり移動である。

世界とつなぐ日本の翼
 大分の平松知事の「一村一品運動」に代表される地方の活性化運動は全国的な盛りあがりを見せている。このような地方自治体の活性化運動も中国の上海における「一街一品運動」、武漢の「一村一宝運動」の成立というように広範に影響を与えつつある。今や「ローカルなにおいを出しながらグローバルな世界市場に通じるものをつくる」というところまで地方同士の競争は進み、この地域起し運動も一段と高い視野に到達している。
 国全体に文化的な活力がみなぎったのは都市国家の栄えたギリシャ時代、ルネッサンスの時代、そして日本の江戸時代である。現在の日本を考える場合にこの江戸時代を学ぶことによってきわめて大きな示唆を与えられる。
ほぼ二〇〇年前につくられた江戸時代の「日本山海名産図絵」をみると18世紀後半に多種多様の地方産業と特産品が生まれているのがわかる。このような多彩な商品とそれを流通させる商人、そして学者や文化人の交遊によって全国の交流が達成されたのである。
 つまり今後、主要都市に路線を展開していく時に大切なことは、何をもって貢献するのかというコンセプトをあきらかにすることである。生き残りのために地域の活性化が必要とされているという現代のテーマに即して考えなければならない。江戸時代を範にとると地域に埋没して活動をしている役人、商工会議所のメンバー、市民グループといった人達と共通の課題を説くという心構えで交流を持つことが重要である。
具体的には各地域の活性化のためのイベントへの協力などが考えられる。市制一〇〇周年イベントが全国に目白押しであり、チャンスである。従来からある大型の運動をあげてみよう。金沢のフードピア、鹿児島のからいも交流、福岡のよかトピア、北海道の北方圏運動、地域づくり青年交流日米会議(熊本―米モンタナ)……。

青年会議所
 まず20才からから40才までの地方の経営者などからなる青年会議所と協力すべきである。「地域の個性と可能性」(日本青年会議所 一九八七年総合資料)をみきわめながら、「握手をくりかえすだけの国際交流」から脱皮しようとしている人たちである。江戸時代をふりかえってみると草もう(民間)の文化の担い手は村役人、地主、問屋、仲買、高利貸であった。つまり、現代にあてはめると地方官僚、地方の経営者、などでありその主流は青年会議所のメンバーやその成長した姿である商工会議所のメンバーたちなのである。ここでひとつ留意すべきは、地方ではなく地域という概念で考えるべきだということであろう。県や市ではひとつの文化とか気質の面では一体感を持ちにくい。市町村では小さすぎ、県では大きすぎるから、むしろ江戸時代の藩くらいのレベルで考えていくのがよいのではないか。REGIONAL IDENTITYに関心の深い熊本のホープ細川知事は「廃県置藩」をとなえている。

姉妹都市
 地域の活性化のキーワードは国際化であるということから各都市の姉妹関係を活用することである。外務省の調べによると地方自治体の姉妹提携は一九五五年の長崎・セントポールから始まり、10年後の海外渡航の自由化の直後は一〇〇件、そして30年後の一九八五年には五六九件を数えるまでになっている。一九五〇年代のアメリカ偏重、'60年代の欧州の増加、'70年代のアジア、南米、ソ連の急増という変遷のもと、現在は3分の1が休眠状態らしい。文化的な面のみならず広島市のように経済的な分野にもその交流をひろげる動きがある事は注目に値することである。もともと姉妹都市は都市国家の軍事同盟の名残であるらしい。これからは生き延びるために親善友好関係だけでなく経済同盟を築くべきではないか。そのための仕掛けを日本航空が担うべきである。

ネットワーキング
 金沢、鹿児島、広島松山、函館等、これらの都市は当社の国内展開の第一歩であるが、続くべき各主要地域の経済、文化の拠点である主要都市の候補は、10万石レベル以上の城下町であり、かつ現在の人口も20万から50万人程度のレベルの都市である。遅くとも21世紀までに全てネットすべきである。
 全国の主要地域の中核となる主要都市に日本航空は進出すべきであり、その際、地域活性化のために歴史と地理を十分に知り尽くした地元出身の人材を投入することである。その上で、国際線の運営で培った当社の持つノウハウやノウフーを最大限に活用し、会社的レベルでバックアップしていかなければならない。

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